アレクサンダー・テクニークとは？

レッスンで何をするの？

アレクサンダー・テクニークは、自分の能力を最大限に生かせるようになっていくための道具です。
自分には弾けないと思っていたものが弾けるようになるといったことは、単に練習量や時間、身体的特質の問題だけではありません。むしろ、私たちが図らずも自ら妨げている自分の潜在的な能力を取り戻すことで、できることの範囲は飛躍的に広がっていくものです。

私たちは、それまで生きてきた中で、さまざまな習慣を身につけています。
そうした習慣の中には、自分では気づいていないものも多く、不要であるばかりか、自分の能力を発揮するのを妨げているものもあります。
アレクサンダー・テクニークのレッスンでは、教師の助けにより、身体の使い方や身体的な習慣を見直し、こうした障害物を取り除いていきます。

身体の使い方は、心の使い方と密接に結びついています。
レッスンを通じて身体の使い方が向上していくと、心身、つまり全体としての自分の使い方がよくなっていきます。
すると、さまざまなアクティビティの質が向上していくのみならず、そうしたアクティビティをより楽に、疲れにくく行えるようになっていくことを実感できるでしょう。

自分のしていることの中に、やらなくてよい余計なことが含まれていて、そのせいで上手くいくはずのものが上手くできない。
このような局面で、何が妨げとなっているのかは、なかなか自分では気がつきにくいことです。
アレクサンダー・テクニークのレッスンでは、自分が今、何をしているかへの気づきが高まるよう、教師が訓練された手を使って導いていきます。
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なぜ音楽家に？

もともとアレクサンダー・テクニークは、音楽家向けに生み出された訳ではありません。
実際、このテクニークの生みの親、F. M. アレクサンダーは役者でした。
​彼が舞台での声枯れに悩まされるようになったことから、このテクニークが生まれたのです。
何が演技の邪魔をしているのか。
アレクサンダーはそれを追求していったのです。
例えば、難しいパッセージで、どうしても余計な力が入ってしまう時、やみくもに何度も繰り返すことによって克服しようとしてもなかなか上手くいかないことがあります。
アレクサンダー・テクニークの教師は、そのような局面において何が邪魔をしているのかを見極め、その方自身が気づきを高めていけるよう、導いていきます。

アレクサンダーのテクニークは、問題や痛みを解決し得るものですが、そうしたことは出発点のひとつにすぎず、むしろ、その人自身のトータルなコーディネーションを向上させ、潜在的可能性を開花させていくことこそ、このテクニークの本領であるといえます。
演奏というのは、身体的な動きだけでなく、頭や心の使い方まで、自分全体をフルに使う、とても複雑な行為です。
だからこそ、コーディネーションの整った状態で、自分全体を効率的かつ滑らかに使い、容易さを獲得していくことは、演奏においてとても大切なことです。
アレクサンダー・テクニークを通して、自分全体のコーディネーションが整っていくと、演奏の質が向上していくことを実感していただきたいと思います。

アレクサンダー・テクニークは、音楽と同様、学ぶものです。
セラピーではありません。
それは自分自身を知っていく道のりであるといえるでしょう。